元大手管理会社取締役_ブログ

管理会社の不祥事は後を絶たず、マンション管理適正化法が成立したのもこうした背景があったからと考えられます。国土交通省がマンション管理会社を登録制とし、登録が無い者は管理業を行うことが出来なくなりました。


また、マンション管理適正化法を犯したり、金銭不祥事を起こしたりといった管理会社は、国土交通省のネガティブ情報サイトに実名で内容がアップされることとなりました。
国が問題を引き起こしたマンション管理会社の法令違反や不正の情報を広く国民に知らしめ、(契約先として選定して大丈夫ですか?と)注意を促すのです。
 

残念ながら、このネガティブ情報は、法律違反や金銭不祥事のすべてを反映したものではありません。消費者からの告発があり、管理会社がこれを正直に(もしくはいやいやながら)認めた場合や、国土交通省宛てに内部告発があり、管理会社がこれを(隠し通せないとあきらめ)認めた場合に限り、ネガティブ情報として表に出ると言っても言い過ぎでは無いでしょう。


契約違反・法律違反・金銭不祥事は、対外的に明らかになり、かつそれが問題視され、更にこれを隠しとおせない場合に限って表面化するのです。私はこのようなネガティブ情報を自主申告して処分された管理会社の事例を未だ聞いたことがありません。
「当社は未だ国土交通省の処分を受けたことが一度もありません。」と自慢する管理会社が実は多くの不正をひた隠しているといったことを多数承知しています。


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【事例1】
管理員による金銭着服の不正が発覚し、管理組合から損害賠償請求訴訟を提起された管理会社。
逆に事実無根、名誉棄損だと管理組合に対して損害賠償請求訴訟を提起し訴訟合戦となる。
一審は管理会社の敗訴、二審で和解。相当の損害賠償金を支払ったにもかかわらず、本件和解内容についてお互い口外しないとの守秘義務を課しているため、双方マスコミの取材も国交省の問い合わせに関してもノーコメント。事実確認が出来なければ国とて処分の対象とするわけにはいかないようです。
 
  
【事例2】
管理委託契約期間を1年から3年に変更して契約を更新した管理会社。
本来契約条件が管理組合に不利になる(契約期間の延長はこれに該当する)場合は重要事項説明会を開催する必要があるがこれを行わなかった。組合員から社団法人マンション管理業協会の苦情窓口や国土交通省に相談が上がる。
管理会社は「重要事項説明会は確かに行った。」「いつ行ったかは記録が無いため判らない。」「重要事項説明会を行った証拠を示す法的義務はない。」といった驚くべき回答でこの危機を乗り切ってしまう。
マンション管理業協会も国土交通省も告発があり、かつその事実を認めた管理会社を処分するにすぎず、警察や国税のような強制的捜査はできないそうです。


【事例3】
若手フロントマンが複数の管理組合の金銭を着服。責任者がそれぞれの理事長をすぐに訪問して、「前途ある若者に寛大なご処置を」と懇願し、着服した金銭は直ちに返還した。
当然前途ある若者はクビになり、本人と連帯保証人の父親から長期分割で弁済させている。寛大な処置で表ざたにならず一番安堵したのは当の管理会社。


これらの事例が、「当社は未だ法令違反等で国土交通省の処分を受けたことのない立派な管理会社です。」の実態なのですね。



菅 理(すが さとし)

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ある「元」大手管理会社取締役のつぶやき

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